山釣り雑感

■雑感というより独り言ともつかないボヤキ■ その1 (2001/07/01)

渓流釣りの一般的な盛期である3〜4月頃はどこの渓へ行っても人が多いのでほとんど釣りには行きません。(この頃は山スキーで忙しいという理由もありますが。)山スキーシーズンが終わって、多くの渓流釣り師が鮎釣りの方に移っていった頃、5月末から6月頃〜真夏が私にとっての山釣りの盛期になります。この頃になると渓はうっとおしい虫も多くなり薮も茂ってきてあまりいい雰囲気ではないですが、その分人も少なくてゆっくりできるのです。しかし、魚はスレてきて釣りづらくなっていますが、どうせたくさん釣るのが目的ではないのでちょうどいいのです。

最近は渓流釣り人口が多くなり、どこも釣り荒れていて釣りづらくなっていますが、私が好んで行く奈良の十津川村周辺は、釣り場の範囲がものすごく広くてまだまだ未知の渓がいくつもあり、何よりも十津川村漁協が質のよい渓流魚を残そうという方針で魚の保護に力を尽くしているので、そんなに大釣りすることはありませんが質のいい魚が釣れるのがうれしいところであるわけです。

どうか十津川村だけは、あの天川村や川上村みたいにはなって欲しくないものです。天川村の洞川の禁漁区域の川の中をみれば今の天川村の現状がよくわかります。そこには多くの渓流魚の姿を見ることができますが、そこにいるのは、もちろんアマゴもいますが、ニジマスあり、ブラウンあり、イワナあり(背中がまだら模様の外国産のイワナですよ!!)、もうメチャクチャ状態。養魚場で育てた肥満魚を無差別に放流し高額の遊漁料を取って釣り客を呼び、渓流魚の宝庫と宣伝しているがその実は放流魚しかいなくなっているのが今の現状なのです。そういった釣り堀状態の釣り場で味をしめた極悪釣り師連中が、渓の奥まで入ってきて僅かばかりに残っているにすぎない天然魚を釣りあさっている、というのが今の天川村の渓の現状です。

例えば、天川源流部の川迫川神童子谷という有名な渓がありますが、ここはかつては渓流魚の宝庫と言われた渓でしたが、ここの下流部はアマゴ域のはずなのに10年ぐらい前からイワナがよく釣れていました。ところがイワナといっても在来種のキリクチはそのころから既に絶滅していて、釣れるのは簡単に養殖できるニッコウイワナ系イワナが放流されたものだったのです。そのころから無差別な放流がなされていて、無知な釣り人はニッコウイワナを釣ってキリクチが釣れたと思わされているわけです。(イワナのことをよく知っている者であれば、キリクチとニッコウイワナの違いは見ればわかるはずですが。)実際、ある釣り雑誌で「神童子谷で釣れたキリクチ」と称してニッコウイワナが写真入りで紹介されたりしていたことがあります。それに加えて最近では、アメマス系イワナや奇妙なまだら模様の外国産イワナ(ブルックトラウト)も放流されているらしい。今や、このあたりでは、アマゴよりもイワナの方がよく釣れる、それもアメマス系イワナや外国産イワナが、ということらしいです。

川上村の現状は言わずもがな、です。かつてはアマゴの宝庫であった吉野川本流部が、3〜4月の所謂渓流釣りの盛期にだけ大量に放流された成魚がいるだけの川に成り下がっているのです。あのあたりの釣り道具屋に行けば、川上村で釣れたと書かれたブクブクに太った尺上放流アマゴの魚拓が額入りでこれ見よがしに飾ってあったりします。

十津川村漁協は、放流は在来種のアマゴから採った発眼卵放流、稚魚放流だけで成魚放流は絶対にやらない、という方針ですから、本流部で釣れる魚もほとんど天然漁と同じ良質の魚ですし、渓奥にはまだまだ天然魚が生存しています。しかし、他の成魚放流河川のように、何十匹も大釣りするなんてことはまずほとんどありませんから、釣ることだけが目的の釣り師連中はあまり来ないというのが、私のような山釣りを好む者にはうれしいところなのです。

ところが、最近は、極悪釣り師に加えてあの忌まわしきバサーとかいう連中がこの十津川村あたりまで進出してきていて、風屋ダム湖とかは既にバス釣りのメッカになりつつあるということらしいです。私がよく行く風屋ダム湖に直接注ぐ渓の入口でも、バスボートを積んだ大阪や神戸ナンバーの車をよく見かけるようになってきています。本当にいつの間にこんなことになってしまったのだろう。全く油断も隙もありゃしない。

どうか、十津川村周辺の渓だけは、このままの状態でいつまでも残って欲しいと願わずにいられない今日この頃です。

十津川村周辺の概略図

(このボヤキ、いずれ気が向いたらまた続きます。)


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