弥山川から八経ヶ岳・弥山へ


■ はじめに
大峰山脈の盟主、弥山(1895m)・近畿最高峰八経ヶ岳(1915m)は近年の百名山ブームで多くの登山者が訪れているが、ほとんどの登山者は最短ルートの行者還トンネル西口からの日帰り往復コースに集中している。しかし、いくつかある弥山・八経ヶ岳への登山ルートの中で最高のルートはと問われれば、純然たる岩登り・沢登りルートを除けば、それは弥山川ルートである、と私は答えたい。この弥山川ルートは、大瀑布・大ゴルジュ帯を含む渓谷美、そそり立つ大岩壁、鬱蒼たる原生林、これらの大峰の魅力がひとつに凝縮された素晴しいルートであるにもかかわらず訪れる人は極めて稀である。それはなぜであろうか。

弥山川の中程にある双門ノ大滝の前後は連瀑帯となっていて凄まじい大ゴルジュを形成している。大ゴルジュ帯を突破し大滝を登攀する弥山川完全遡行は泉州山岳会等の記録に見られるが、これは完全に岩壁登攀の領域になるので一般的ではない。しかし大ゴルジュ帯を大高巻きするルートはかなり昔から開かれており、危険個所には梯子、鎖等が掛けられ、岩登り、沢登りの装備を特に必要としないルートとしてガイドブックにも上級者コースとしてよく紹介されている。しかしながら、ガイドブックに載っているルートとはいえ、整備された登山道を歩くことしかしたことのない者には、このルートは道というものはほとんど無いに等しく見えるだろうし、ルートが不明瞭で的確なルート判断が要求される箇所、足を踏み外せばそれで一巻の終りという箇所、等も多くあり、一般の登山道を歩くだけのルートとはかなり趣の違った極めてバリエーション的要素が強いルートと言わざるをえない。

近年の中高年登山者の百名山ブームでは、百名山の最も簡単なルートで登った山の数を稼ぐという傾向に多くの登山者が熱を上げているにすぎないのであり、この弥山・八経ヶ岳もその例に漏れず、最短で簡単なルートばかりに多くの人が集中し、弥山川ルートのような内容は濃いが難しく長大なルートというのは敬遠され忘れられている、ということが今の百名山ブームの底の浅さを如実に現している、と言ってしまうのは言い過ぎであろうか。

私はかなり昔に単独で初めて弥山川ルートを登って以来その魅力に魅了され、以来、単独で、あるいは同行者と供に、と何度もこのルートを登っているが登るたびに新たな発見があり新たな感動がある。また長大なこのルートは私の体力のバロメータにもなっており、ある程度の荷を担ぎこのルートが問題なく歩き通せればまだまだ大丈夫、と自分自身に言い聞かせてもいるのである。昨年の夏に息子を同行させて4年ぶりにこのルートを登ったが、これをきっかけにまた自分の中での弥山川詣で熱が復活したようで、今回久しぶりにまた単独で訪れてみた。


■ コース概要
□ 2001/09/22  熊渡の出合→白川八丁河原→双門一ノ滝→滝見平→トサカ尾の肩→河原避難小屋→桶ノ谷出合→狼平(狼平避難小屋 泊)
□ 2001/09/23  狼平→弥山川源流部→八剣谷→八経ヶ岳ダイレクトルート→八経ヶ岳→弥山小屋→狼平→栃尾辻→川合

ルート概要図はこちら

■参加者
・oba (単独)



【9/22 弥山川から狼平へ】 に続く