奈良県の川上村白川渡で吉野川本流から別れる中奥川の奥にある戸倉谷は、林道から見上げることができる大ーに一気に駆け上がる急峻な谷で、短い谷だが沢登り中級者のトレーニングに絶好と、沢雪山歩のMOGUさんお薦めの谷です。そこで囲炉裏村の自称ヘナチョコクライマー(私のようなヘナチョコ山スキーヤー崩れの沢屋もどきから見ればスーパークライマー)のclifさんとobaの2名で行ってきました。期待通り、遡行距離は短いけど沢登りの要素が凝縮されたいい谷で楽しめました。
【山 域】(台高)吉野川水系中奥川戸倉谷
【場 所】奈良県南部
【日 時】2002年 9月 7日(土)
【コース】戸倉谷出合→戸倉谷遡行→上流部吊り橋→廃道を下降→中奥川林道
【参加者】clifさん、oba (2名)
【天 気】曇り時々小雨
小滝を超えて前進 |
早朝、川上村道の駅杉の湯でclifさんと合流。obaの車で白川渡から中奥川林道に入るが、2人とも中奥川は初めてで土地勘が全く無く、戸倉谷の入口がどこかよくわからない。時々雨が降ったりのややこしい天気の中、林道を走っていくと右手上方に凄い岩壁が見えてきたので、ここに入っている谷が戸倉谷だろうと、近くに車を止めて準備して出発。40mザイル2本、ハンマーに、ピトン数本、その他登攀具色々と持っての完全装備に身を固め、いささか緊張気味に中奥川本流に降り谷の入口に行ってみるが、どうも様子が違う。これはおかしいと林道に這い上がり、持っていたMOGUさんの戸倉谷の記録のコピーをよく読んでみると、どうやらもっと上流のようだ。また車に戻り林道を更に上流に入り、やっと戸倉谷らしき谷を見つけた。この間1時間半ほどの時間ロスで、戸倉谷出合から入渓したのは9時をだいぶ回っていた。
20m滝は右側リッジを登る |
小滝を超えて4〜5m程の滝をいくつか越えていくと最初の難関25m滝が出現。このあたりから谷の両岸はそそり立ちゴルジュ状を呈してくる。ここは左手側壁を巻き登ることにするが、巻きルートもかなり悪そうなので早速ザイルを出してアンザイレンで登る。側壁を登り薮をかき分けトラバースして滝の落ち口に降りると、すぐに20m滝が行く手を塞ぐ。滝をよく観察すると右手のクラックに沿って直登できそうだが、今日はかなり水量が多いようで、滝の落ち口付近ではまともに水を被りそうでちょっと無理。ここは右手のリッジ状岩稜をアンザイレンで登る。
30m滝の前に立つclifさん |
この20m滝上の倒木が詰まった所を越えると両岸の壁は更に狭まり、トユ状滝が連続する連瀑帯になる。水量が少なければシャワーを浴びながら中央突破もできそうな感じであるが、ここは左側壁を巻き気味に登る。ここの左側壁には残置ボルトがあった。
連瀑帯を過ぎるとしばらくで30mの堂々たる滝が出現。滝の両側の壁はそそり立ちちょっと手が出そうにない。ここは右岸からルンゼ状の枝谷がスダレ状滝を伴って入っているのでここを登り大きく巻く。早めにトラバースしてもすぐに壁に阻まれそうな気配だったので、ザイルを何ピッチも伸ばしかなり大きめに巻き上がった。
枝谷のスダレ状滝の前にて |
巻き上がったところで下の谷を覗くと、かなり下に側壁に囲まれて左手に大きく屈曲した谷が見えた。ここで立木を支点にして40mザイル2本を繋いでの懸垂下降。ザイルいっぱいでもまだ谷床には届かなかったが、後は傾斜も緩かったのでそのまま下降して谷床に降り立つ。どうやら、30m滝の上部の滝もまとめて巻いてしまった様子。先へ進むと屏風のような側壁に囲まれた廊下の中で本谷は右手から20m程の滝になって落ちている。見上げると上に吊り橋が架かっているのが見えた。
時間もかなりたっていたのでここで遡行終了とすることにして、20m滝の左手のガレたルンゼを登り、左にトラバースして吊り橋の端に着いた。ここで時計を見ると14時半近く。入渓からほぼ5時間の登攀に私はもう満腹気味であった。ここからははっきりとした道があるのでそれをたどって下降。途中で大ーの頭に出たので下を見るとはるか下に林道が見えていて、止めてある車までよく見えた。水平距離ではほんのわずかであるがその高度差は300m以上か?この谷はほんとうに凄まじい傾斜の谷であることが伺えた。
遡行終了地点の吊り橋上にて |
下降路は途中ガレ場のトラバースや、腐朽した桟橋等の危険箇所も何カ所かあるが、それほど苦労することもなく1時間ほどで中奥川の本流の流れに降り立つことができた。車に戻り靴を脱いだらやっぱりヒルが1匹もぐり込んでいた。この後中庄温泉で汗を流し、小腹が空いていたので軽く食事をして解散。
大ーの頭からはるか下に林道が見える |
滝の登攀、高巻き、泥壁登り、ヤブをかき分けてのトラバース、等々、沢登りの要素が短い谷に凝縮された、成る程、戸倉谷は沢登りのトレーニングには絶好の谷であることに納得。今日は、優れたクライマーであるclifさんにリードを全て任せて引っ張り上げてもらいました。私にとっても久しぶりのザイルワークのいいトレーニングになりました。clifさん、どうもありがとうございました。
END
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