明神谷から静寂の馬ノ鞍峰へ

吉野川の支流北股川から更に別れる三之公川の源流部にある明神谷から台高主脈の馬ノ鞍峰(1177.8m)へ登るコースは、台高の沢登り初級コースとして知られていますが、今まで行ったことがなかったので単独で行ってみようと思っていたところ、囲炉裏村のクライマー、レンゲ辻さんに同行していただけることになり2人で行って来ました。

【山 域】(台高)吉野川水系三之公川明神谷(馬ノ鞍谷)
【場 所】奈良県南部
【日 時】2002年 10月05日(土)
【コース】明神谷出合→明神滝→馬ノ鞍谷→馬ノ鞍峰→カクシ平谷源頭→カクシ平→明神谷出合
【参加者】レンゲ辻さん、oba (2名)
【天 気】晴れ



谷床に降りて遡行開始

2条10m滝の前で
前夜、レンゲ辻さんと合流しobaの車で三之公川林道の終点まで入りそこで小宴会の後1時頃就寝。朝6時起床で朝食、準備の後7時出発。

整備された遊歩道を30分程歩くと右手前方に明神滝が望める。滝見の下降路があるので降りて滝を見に行く。明神滝は落差40mの垂直に落ちる見事な滝で1見の価値あり。遊歩道まで戻り少し進むとヒノキの大木がありそこに下に降りる踏み跡があるので、それをたどると明神滝上流の谷床に降りることができた。ここから谷を遡行開始、7時50分。

すぐに現れる二ノ滝8mは左岸側を巻き登る。小滝をいくつか越えて進むと、右岸に登山道が通っているのが見えて、カクシ平へと書かれた標識がかかっていて苔むしたベンチもあった。それを見送り更に進むと二俣に出合う。8時30分。左カクシ平谷、右馬ノ鞍谷である。ここで小休止。休憩後右俣に入る。

馬ノ鞍谷に入るとしばらくで2条10m滝。左側を簡単に越えて進むと谷が右手に曲がり両岸が狭まった所に3段25mの滝が出現。倒木で滝がよく見えないので近くまで行って観察すると、最下段の滝は簡単に登れそうであるが、上段の滝は滝身に詰まった倒木に遮られてよく見えないが、更に両岸が狭まり立っておりちょっと一筋縄ではいきそうにない。ここを登ろうとした先人が大苦戦したという話を聞いていたので、ここは安全策で左岸を巻くことにする。左岸の泥壁を登り大きく巻き上がり滝上の谷床に降り立った。9時25分。


岩を割って落ちる3段25m滝

最後の2段滝、上段はまともにシャワークライミング
谷に戻りその上にある斜瀑を簡単に越えて、右手に枝谷を見送ると奥の二俣に出会う。右俣の方が若干水量は多いようであるがここは左に進む。しばらくで谷が崩壊した岩で埋め尽くされほとんど水が流れていなくなる。崩壊地、伏流帯を越えて更に進むと再び水が流れ出し、いくつか小滝を超えて進むと7m8m2段の斜瀑が現れ、上段の滝ではまともに飛瀑を被ってのシャワークライミングになってしまった。季節外れのシャワークライミングに全身びしょ濡れ。

この上で水量は少なくなり、水の乏しい小滝をいくつか越えていくと谷は二つに分かれる。右手は馬ノ鞍峰の直下に突き上げているようだがかなりの傾斜。ここは幾分傾斜の緩そうな左手の谷を選択。いつしか水も切れ最後の詰めに入り、上を見上げると樹林の間に稜線のシルエットが見えてきて、急斜面を両手を使って這いずり上がるとついに稜線にたどり着いた。稜線尾根を右手に登りしばらくで馬ノ鞍峰の頂上に到着。11時15分。

展望はないが誰も人に会うこともない、しっとりとした樹林に囲まれた静寂の頂上だ。ここでザックを下ろし大休止。ここは南北に台高の縦走路が通っている台高主脈の1ピークであるが、訪れる人も極めて稀な、ほんとうに静寂としっとりとした味わいにつつまれた雰囲気がとてもいい。

休憩の後、下山は登ってきた尾根を西に戻りカクシ平谷源頭を目指す。このあたり、ブナ、ヒメシャラの樹林に囲まれて紅葉の頃にもう一度訪れてみたいと思うところだ。樹林に囲まれ見通しの悪い尾根を適当に降りていたら、どうやら左手寄りの枝尾根に入っているようなので進路修正。右手真横にトラバースし右手隣の尾根に戻り、木に所々付けられたテープを頼りに進む。カクシ平谷の源頭と思われるところでは親切にも下降点を示す矢印マークが木に付けられていた。


馬ノ鞍峰頂上にて

馬ノ鞍峰西尾根から見る静寂の森
踏み跡をたどって下降しばらくでカクシ平谷の流れが出てきて、所々倒木などで塞がれた所を注意して通過、下降を続けると、「三之公行宮跡」と書かれた石碑が立っている所に到着。このあたり台地状の石積み跡が昔の住居跡を忍ばせる南朝ゆかりのカクシ平と呼ばれる所。ここからはっきりとした遊歩道が続いているが、ここまで訪れるハイカーも極めて稀なようで、所々に設けられたベンチ等も苔むしていて、静かな落ち着いた雰囲気が漂っている。

谷の右岸沿いの遊歩道をどんどん下るとやがて朝歩いた遊歩道に合流し、左手に明神滝が見えてきて更に下ると明神谷出合の車の止めてある道路に戻った。馬ノ鞍峰下山開始後およそ2時間の13時45分。

今日歩いた明神谷から馬ノ鞍峰のコースは、沢伝いのルートもそれほど難しい所は無く、沢登り初級者でも気持ちよく歩けるほんとうにいいコースだ。また登り着いた馬ノ鞍峰一帯のしっとりとした味わいの樹林の雰囲気は、台高の山の中でも人擦れの全く無い静寂と厳かな雰囲気に包まれた、まさに秘境というのにふさわしい所だと痛感した。

今日同行していただいたレンゲ辻さんは、obaのようないいかげんな沢屋モドキとは違って、大阪の某有名山岳会所属のクライマーで、今日も所々でレンゲ辻さんの出してくれたお助け紐に助けていただきました。レンゲ辻さん、どうもありがとうございました。また宜しくお付き合い下さいませ。

END