新穂高から槍平経由、飛騨沢を滑る

我が「くろべぇ」の山スキーの師匠である新穂高のスキー仙人Iさんは、今年で65歳になるはずであるが、新穂高中尾在住のログビルダーにして日本山岳ガイド連盟公認ガイド、そして現役のスーパー山スキーヤーである。そのIさんのグループが正月槍ヶ岳山行の際、槍平冬季小屋に置いてきたままになっている大量の食料他のデポ品を回収に行き(食料を食べに行く)、そのついでに飛騨沢をスキーで滑りに行こう、という計画が持ち上がり、それに私とTM氏が乗って今回の山行となった。

■コース概要
□2001/03/18  新穂高→白出沢→滝谷出合→槍平(冬季小屋泊)
□2001/03/19  槍平→飛騨沢2700m地点→槍平→白出沢→新穂高

ルート概要図はこちら

■参加者
・oba (TRAB PUMA DRIVE + FRITSCHI DIAMIR + NORDICA TR9)
・TM (TUASKI EXCALIBUR + FRITSCHI DIAMIR + NORDICA TR9)
・Iさん (KASTLE TOUR RANDONNEE + FRITSCHI DIAMIR + NORDICA TR12)
・Hさん (FISCHER TOUR CAP + FRITSCHI DIAMIR + NORDICA TR12)

■行動時間
3/18
09:30 右俣谷林道入口出発    11:20 白出沢    14:00 滝谷出合    15:20 槍平
3/19
07:00 槍平出発    09:00 標高2700m地点で登高中止    09:15  飛騨沢滑降開始
09:30 槍平    10:20 荷物を撤収し槍平出発
10:40 雪崩の危険地帯を過ぎ、後はのんびり
14:00 のんびりハイキングで新穂高駐車場に戻る

3/18
朝から外はどんよりと曇り小雨模様。今日もダメか、と皆が厭戦気分になっていたが、午後から回復という天気予報を信じて、予定よりかなり遅れて出発。蒲田川右俣谷林道をシールで歩き始める。歩いているうちに天気は徐々に回復。白出沢に着く頃には晴れ間も見えてくる。

白出沢を過ぎてトラバースルートを取り、河原に降りたところで大休止。出発からここまでは5名であったが、山スキーに不慣れなKさんがここでリタイア、新穂高へ戻りここからは4名となる。ここらあたりで空はすっかり晴れ、行手頭上には南岳の稜線も見えてくる。

休憩の後、所々水流の出た沢沿いにルートを取り、いよいよ雪崩の危険地帯へ突入する。4名が間隔を開けて慎重にシール登高を続ける。デブリが押し出たブドウ谷、チビ谷を過ぎ、河原がデブリで小山のようになった滝谷出合に着く。

ここで、気温がかなり高く雪崩がヤバイのでしばらく待機。そうこうしていると案の定、滝谷の少し先の右手斜面で雪崩が発生したのを目撃。もうしばらく待機した後出発。滝谷本谷を少し登り再び河原に降りてデブリの脇を慎重に進む。滝谷本谷から見上げる北穂高の岩峰は圧倒的な迫力で頭上に迫っている。

滝谷出合からは、ほぼ沢沿いになだらかに登り槍平に到着。冬季小屋は今夜は我々だけの貸切だ。デポ品を開け今夜の泊まりの準備をする。デポ品の食料、燃料がたっぷりあるので実に快適な一夜であった。
(サムネイル画像をクリックすると拡大画像が表示されます。)
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デブリの脇を
慎重に進む
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滝谷本谷から見上げる
北穂高の岩峰群
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槍平冬季小屋に到着
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夕日に輝く穂高連峰

3/19
5時に起床。朝食を済ませ、準備をして7時出発。天候はこれ以上望みようのない快晴。

飛騨沢左岸沿いに登り、途中傾斜が強くなりクトー(スキーアイゼン)を装着。更に登り続け飛騨沢源頭部の核心部に入って行く。頭上には飛騨乗越が見えてくる。槍ヶ岳の一部も姿を現してくる。

一昨日の晩から昨日の朝にかけて降ったと思われる雪がパックされた素晴らしい雪質。素晴らしい景観を目の前にしながら標高2700m地点まで登る。

これより上部はますます傾斜は強くなり、源頭部のすり鉢状斜面の真ん中に入って行くので、もしも雪崩が発生したときは逃げ場がなくなってしまう。雪は比較的安定しているように思えたが、ここはリスクを背負って賭をすることは絶対にやってはいけないと判断。ここで登高中止。

シールをはがし、ビンディングと兼用靴を滑降モードに切替え滑降の準備をする。飛騨沢標高2700m地点より沢のど真ん中を滑降開始。最高のパウダーがパックされた斜面に4人が舞った。

パウダーに覆われた沢芯を舞うように滑り降りアッという間に槍平に到着。荷物をまとめて重くなったザックを背負いここからも滑降を続ける。ザラメ雪に変わった沢沿いを滑り、雪崩の危険地帯をさっさと通過。

白出沢出合の少し上部の、ここまで来れば大丈夫というところで大休止。ここからはポカポカ陽気のハイキング気分で、酒を飲んだり、釣りをしたり、とのんびりしながらほぼ登路沿いに戻り林道に降り立った。
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飛騨沢左岸の斜面を
登る
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飛騨乗越を見上げ
ながら登る
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飛騨沢に舞う-1
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飛騨沢に舞う-2
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飛騨沢に舞う-3
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飛騨沢に舞う-4
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槍平で穂高を
バックに
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槍平からも更に
滑降は続く

3月の飛騨沢というのは、やはり雪崩の危険が非常に高いのであまり一般的ではないが、条件に恵まれれば最高の山スキールートであることは間違いない。しかし、今回はただ単に運が良かっただけかもしれない、ということを肝に銘じて、雪崩に対しては更に慎重にならなければならない、と決意を新たにした、私にとっては非常に意義深い山行でした。

END